レジにあるメニューが無くなるとマックにとってどんなメリットが生まれるのか考えてみた(長文)

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と言うわけで、レジに置いてあったメニュー一覧が無くなったようです。
客単価向上という側面ばかりネット上では論じられていますので、それ以外のメリットについて補足しながら説明をしたいと思います。

前提:

  • バイト辞めてもう5年経過してます
  • 7年やってましたが、男のくせにカウンターメイン(役職としてはスターまで行った)でしたので、厨房はちょっとしか分かりません。

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1.回転率は間違いなく上がる

秒刊SUNDAYさんの電話取材によると、オフィシャルではなるべく並んでいる間にメニューを見ていただきスムーズに注文が出来るように」と回答しているようです。

さて。スムーズに注文が出来ると、回転数は上がるのでしょうか。結論から言うとYes。以下で詳しく説明します。

2. MFYのシステムを理解しよう

マクドナルドは10年ちょっと前から、ステージングという方式(需要を予測し、事前に完成品としてストックする)から、Made For You(MFYと表記)のシステムに変更を進めてきました。
MFYのシステムでは、オーダーをレジに打ち込んだ瞬間に、イニシエーター(パンを焼いたり蒸したりしつつ、包装紙を出す人)のいる場所に設置されているディスプレイにオーダーが表示されます。ポテトのオーダーはポテトエリアの近くにある画面に、ドリンクのオーダーはHLZ(Heated Landing Zone、出来上がった商品が一時的にストックされる場所。底面が超熱い。)近くかドリンクエリアにある画面に表示されます。各部門では、その注文がストア(確定)されると、サーブ(作って出したよ!の合図を出すこと)ができるようになり、一つの注文を完了したことになります。逆に言うと、オーダーがストアされない限り、まだ変更の可能性があると言うことで、作り終わっても消すことが出来ず、先頭に居座り続けます。正直邪魔です。
また、最初の打ち込みから変更になった場合には強調表示され、一度サーブしたものがレジ側操作により復活してオーダー変更という荒技も起こりえます。

なお、MFYシステムではハンバーガーを1つ作るのに、多く見積もっても30秒ちょっとです。速いメンバーで組めば、オーダーが入ってイニシエーターが反応するまでが3秒ほど、パンを焼くのに12秒ほど、ケチャップとマスタードをかけるのに3秒、オニオン、ピクルスは2秒、ミートを置くのが3秒、包むのが2秒ってところでしょうか。それがいくつも生産ライン(プレップライン)上を流れていきますので、5秒に1個は何らかの完成品が出てきます。

厨房内では役割が徹底されており、イニシエーターは、パンを焼き、作るものに対応する包装紙を出す人(余裕があればケチャップとマスタードまでやる)アッセンブルは、ケチャップやマスタード、それぞれに対応したソース、オニオンやピクルスなどの細かいものを載せる人
ファイナル(うろ覚え)は、お肉乗せて包む人といった具合に担当しています。
そのほかに、揚げ物を揚げまくるフライヤー、肉を焼きまくるグリル、二つともやるストッカーなど、いろんな役割がいます。

それぞれが超速で仕事をしていきますのでもう作ってしまったもののオーダー取り消しや個数変更!これが一番混乱します。

特に、フィレオフィッシュとチキンタツタ。あれはパンを蒸すやつなんですけど、一度に2つまでしか蒸すことが出来ない。
1つオーダーが入って、すぐにスイッチONで15秒待っている間に、もう一つ追加になると、それが終わってから更に15秒待つ必要があります。 非合理的です。また、オーダーが入った瞬間に様々な連携が行われ、ベストな状態で作ろうとします。てりやきマックバーガーが入れば、パンがまわってくる前に豚肉をソースの中に浸しておきます。ハンバーガーが大量に出そうだと分かった瞬間、ミートストッカーは次のトレイ用に肉を焼き始めます。

このように、注文が事前に分かっていると、それなりの準備ができること、途中のオーダー変更の発生が減少するという点から、オーダーを取る時に余計な情報を与えずに注文だけをしてもらう仕組みはある程度までは有効に働くことが予想できます。

3. 時間短縮が喫緊の課題だったのでは?

さて、それにしても、何故スムーズにまわることが第一の目標だったのでしょうか。確かに速度の向上は大事なことですが、遅いという裏付けがないといけません。

実は、POS(レジ)では様々な時間が計測されるようになっています。
例えば、

  • 注文を打ち始めてからストアされるまでの時間
  • ストアされてから全てが揃ってサーブされるまでの時間
  • 上記二つを合わせたもの

といった時間は自動で計測され、30分に一回レポートとして印字されます。
もちろん、これは本社側にも送られ、分析されるはずです。

また、私がいた頃は一ヶ月に一度、覆面カスタマーがお店を内緒でチェックして、後からレポートを出すものがありました。
その中には、お店に入ってからお店を出るまでの時間、どの程度待ったのか、というデータがはっきりと示されています。

おそらく、そのデータを見ても、時間短縮が課題となっているのではと思います。そして、それらのデータを解析した結果、注文を受ける時間、もしくは注文するまでに並んだ時間が一番長いというデータになったと予想できます。

 ここまでのまとめ

  1. オーダーが素早く確定することで、みんなの動きも確定し、素早い商品の提供につながる
  2. データの分析の結果、レジに並ぶ時間およびオーダーテイクタイムが一番のネックである結果が出たのではないだろうか
  3. 1,2の課題解決のために、余計な情報を入れ、オーダーテイクタイムの延長を避けるため、カウンターのメニューを無くしたと想像できる

いったいどこで間違えたか

今までのセオリー通りだと、この仕組みを導入する前に、いくつかの県で事前に試行しているはずです。新メニューも、他県では先行発売されていたり、先行発売されたまま他の地域では本発売されなかったりと、きちんとテストがされています。ただ、大都市圏ではないので、おそらく客層を今回は読み間違えたのではないかと想像できます。

おじいちゃん、おばあちゃん、子ども連れ、学生、サラリーマン、パチンコ開店までの時間つぶし客、様々なお客様がいますが、一番オーダーテイクに時間がかかるのはこの人たちです。

「おじいちゃん、おばあちゃんを連れた子連れ家族。」

まず、おじいちゃんおばあちゃんが、席につき、孫の面倒を見ます。
次に、母親だけが注文をします。
それから、孫を呼びよせ、ハッピーセットのおもちゃを選ばせます。
大体品切れのものを選ぶので(品切れシールは目に入りません)、時間がかかります。
子どもたちが終わると、次はおじいちゃんとおばあちゃん。
「おじいちゃんどれ?」「どれって、さかなのやつだよ。さかなのハンバーガー。」
なんて問答を、客席との間で繰り広げます。時には子どもを伝令役にして。
「ナゲットのソースは、バーベキューかマスタードがございます。」
「ほら、太郎、おじいちゃんに聞いてきて。」「うん、分かった。おじいちゃーん」
(10秒後くらい)
「バーベキューだって!」
(よし。全部終わったぞ…)
「あ、そうそう。昨日チラシにクーポン付いてたわよね。ちょっと待ってね。」
(今まで売った内容を一度キャンセルしてクーポン券のセットとして打ち直す。打つのも手間だけれども、厨房にもキャンセル→オーダー変更扱いの表示になるので混乱を招く)
「申し訳ございません、こちらのクーポンを適用の場合は、ポテトがSになっていまいますが、よろしいですか?」
「太郎ー!」

というやりとりで、一番困るのは、おそらく次に並んでいるお客様です。カウンターにメニューがない場合は、大人数のお客様であっても、カウンター近くか客席に掲示してあるメニューボードを見ながら、もしくはクーポンとにらめっこしながら、事前に決めておく必要があります。
その間に単品だけの注文を行うお客様などは、先に注文を済ませることができる訳です。

ところが、事前テストではこのような大人数のお客様の比率が多かった、しかし東京では個人客が多く、上のシナリオ通りにはならなかった、と考えると、このテストは今回は用をなさなかったと予想できます。新商品は時間とはあまり関係ないのですが、今回は時間が関係しているテストですので。
(実際どこでテストをしたのか、そもそもテストがあったのかも分かりませんが。)

また、耳の不自由な方や、ゆっくり選びたいという方に対する配慮を欠くかのような認識がされています。マックの店員は優しい人も多いです。そのようなニーズにだって適確に対応するに違いありません。私のつたないサービスだって、ベビーカーを押すお客様が駐車場の段階で発見できたら、入り口のドアをあける心の準備をしておいたり(ちなみにドライブスルーの混雑状況把握のために駐車場にはカメラが付いていてカウンターで見ることができます)、ミルク用のお湯ありますか、と言われて、お湯と、ミルクを冷ますためのぬるま湯をボウルに入れてセットでお渡ししたりしてきました。もちろん、耳の不自由な方に対応するために、「マック本部で作られている手話DVD」で勉強もしてきました。あまり活用されているかは知りませんが、オーダーを取る流れを全部手話として教えてくれるDVDが店舗には存在しています。今回だって切り捨てている訳、ありませんよ。

まとめ

  1. マクドナルドが、サービス提供スピードの向上のためにカウンターのメニューを無くしたのは一理ある。
  2. オーダーテイクの短縮が、サービス提供スピードの向上に繋がるという分析結果が出たと思われる。
  3. その結果、様々な異論が出たのは素直に受け止めるべきである。全体的に説明が足りない

提言 – WOTを最大限活用すべき

WOTとは、Wireless Order Taker、無線LANで接続されたPDA型の端末です。ドライブスルーなどでは積極的に活用されていますが、店内での活用はあまりなされていないと思います。この端末では、注文だけを受け、会計用の番号を発行します。 お会計と商品の引き渡しはレジで行います。WOTを持っている人は自由に動けますので、既に注文が決まっていそうな人からどんどん注文だけを受け、レジに案内することが出来ます。

例えば、レジが3台設置されている場合、
「レジA … WOTによる注文済みのお客様専用」
「レジB … WOTによる注文済みのお客様優先、ご注文がおきまりのお客様もこちらへどうぞ」
「レジC … ゆっくりお選びいただけるレジです」 (もちろんメニュー表もある)

のようにすると、会計はスムーズにまわります。後は取りそろえと商品生産のスピード勝負になります。どうでしょうね。こっちの方が現実的な対応だと思うのですが。今後どのように判断し、動いていくのか、しばらくはマックから目が離せません。

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